脳画像の読影がとても楽しくなる!前頭葉の各局在を同定する方法
この記事では前頭葉の各局在を水平断画像で診る方法について記載していきたいと思います。
その他の大脳皮質各局在を水平断画像で診る方法に関しては、以下をご覧ください。
◆ はじめに
大脳をイメージするときには、矢状断を真っ先にイメージする人が多いと思います。大脳の矢状断とは、下図のように側方から大脳を見たときの図です。
側方といえども、外面と内面から見た図があります。
例えば、運動前野といえばブロードマンの脳地図(Brodmann area:BA)で6野の外側領域で、視覚誘導性の運動制御を担っています。
また、補足運動野はブロードマンの脳地図で6野の内側領域で、記憶誘導性の運動制御を担っています。運動前野や補足運動野などは有名で、その機能などを知っているセラピストも多いでしょう。
しかし、いざMRIなどの水平断画像で評価する際に、どの部位が運動前野や補足運動野なのか難渋することが多いと思います。せっかく習得した知識でも水平断画像で各局在の場所を知っておかないと、活かすことができません。
そのため、今回は前頭葉の各局在を水平断脳画像で診る方法について記載していきたいと思います。
◆ 前頭葉とは??
前頭葉(Frontal lobe)は、高次脳機能と運動を司る領域になります。もっと噛み砕いて言うと、「人間らしさ」と運動を司る領域です。
前頭葉は大脳の前方、詳しく言うと中心溝よりも前方に位置しています。
◆ 前頭葉の種類とは??
前頭葉は大きく以下の2つに分けられます。
運動関連領野をさらに詳しく区分すると、
- 一次運動野
- 運動前野
- 補足運動野
- 前補足運動野
- 帯状皮質運動野
- 運動性言語野(ブローカ野)
となります。
では、それぞれのMRI上での見かたについてお伝えしていきたいと思います。
◆ 前頭前野を見つける方法とは??
前頭前野は前頭連合野ともいわれていて、人間らしさ、思考、創造性を担う脳の最高中枢であると考えられています。系統発生的にヒトで最もよく発達した脳部位であるとともに、個体発生的には最も遅く成熟する脳部位です。
また、よく聞く「連合野」とは、感覚野・運動野に属さない部位のことをいいます。この前頭前野は、大脳の前方部に位置していて、ブロードマンの脳地図では9・46野の領域を占めています。
主に上前頭回、中前頭回、下前頭回と広く存在しているので、それぞれの脳回を見つけることがとても重要になります。上前頭回、中前頭回、下前頭回は、水平断画像において内側から外側に向かって配列されているので、内側から順番に見つけていきます。
ただし、中前頭回はprecentral knobが見られるレベル(頭頂部の脳溝が目立つレベル)以下で、下前頭回は側脳室体部が見られるレベル(放線冠レベル)以下で見つけることができます。
◆ 一次運動野を見つける方法とは??
一次運動野は、中心溝の前方に位置していて、ブロードマンの脳地図では4野の領域を占めています。
このような位置にあるので、水平断で見るためには中心溝を見つけ出すことがとても重要になります。
中心溝を見つけることができれば、その前に位置している部分が一次運動野になります。ちなみに、後ろに位置してるのは、一次感覚野です。
そのため、中心溝を同定できて、一次運動野を見つけることができれば、運動麻痺や感覚障害の有無を推測することができます。
◆ 運動前野・補足運動野を見つける方法とは??
運動前野は一次運動野の前方、前頭前野の後方に位置していて、ブロードマンの脳地図では6野の外側領域を占めています。
補足運動野、前補足運動野は大脳内側面に位置していて、ブロードマンの脳地図では6野の内側領域を占めています。
その中でも前補足運動野は前方、補足運動野は後方に位置しています。運動前野と補足運動野は、precentral knob が見えるスライスレベルで見つけることができます。
【precentral knobとは??】
手指の運動野のことで、後方に突出しています。
形が特徴的で、「Ω」を逆さにした形やコブが2つ重なるような「ω」のような形になっています。
前述した運動野を見つけることができれば、その上部に位置しているのが運動前野と補足運動野になります。運動前野は外側に、補足運動野は内側で見つけることができます。
◆ 帯状皮質運動野を見つける方法とは??
帯状皮質運動野は前頭葉内側部の帯状回に沿って位置する運動野です。背側部と腹側部に区分され、ブロードマンの脳地図では背側部は24野の領域を、腹側部は32野の領域を占めています。
帯状皮質運動野は、側脳室が見えるスライスレベル(放線冠レベル)で見つけることができます。
◆ 運動性言語野(ブローカ野)を見つける方法とは??
運動性言語野(ブローカ野)は、優位半球(通常は左半球)の下前頭回後方に位置していて、ブロードマンの脳地図では44・45野の領域を占めています。
運動性言語野を見つけるためには、「外側溝前上行枝」という脳溝を見つけることがとても重要になります。
その理由として、運動性言語野は「弁蓋部」と「三角部後部」から構成されていて、これらは外側溝前上行枝を挟むように位置しているからです。
つまり、外側溝前上行枝を見つけることができれば、その前後に運動性言語野が位置しているということです。
◆ 今日のリハゴリ倶楽部
- 前頭葉は、大きく分けると①前頭前野(前頭連合野)と②運動関連領野に区分される。
- 前頭葉の脳回(上前頭回・中前頭回・下前頭回・中心前回)は内側から外側にかけて見つけて行くと見つけやすい。
- precentral knobがある運動野を見つければ、その上部内側が補足運動野、上部外側が運動前野である。