リハゴリ

理学療法士による暇つぶしブログです。

半側空間無視とは?病巣や検査・リハビリ方法とは?

 

半側空間無視(USN)とは?

 

全ての視界が見えているのに無意識下では障害側と対側の物体や人物に気づかない症状のことです。

 

多くは右半球(劣位半球)の障害によって出現するので、左側の視界を無視してしまいます。

 

そのため、ご飯の時に左半分だけを食べ残したり、歩いている時に左側をよくぶつけてしまうような症状が出現します。

 

特に右中大脳動脈(MCA)閉塞の急性期患者では代表的な症状の1つです。

 

半側空間無視の検査は以下の3つがあります。

 

  • 模写試験
  • 線分抹消試験
  • 線分二等分試験

 

臨床上、模写試験は時間がかかるために私は線分抹消試験や線分二等分試験をよく用います。

 

模写試験とは時計や家、花などの見本を患者に同じように書き写してもらいます。半側空間無視が疑われる場合には左半分が描かれていない絵になってしまいます。

 

半側空間無視

Fig. 模写試験

 

線分抹消試験とはあらかじめ紙などに1本線を何本か書いておき、患者に「全ての棒を線で消してください」と指示します。

 

半側空間無視が疑われる場合には左半分の1本線が消されていない絵になってしまいます。

 

半側空間無視

Fig. 線分抹消試験

 

線分二等分試験とは1本線を1本だけ書いておき、患者に「この線のちょうど真ん中と思うところに線を入れてください」と指示します。

 

半側空間無視が疑われる場合には左側を無視してしまいますので、右半分の真ん中に線を入れてしまいます。

 

線分二等分検査

Fig. 線分二等分試験

 

半側空間無視の病巣とは?

 

半側空間無視は劣位半球の上・下頭頂小葉障害によって出現します。

 

上頭頂小葉は体性感覚連合野、下頭頂小葉は縁上回と角回で構成されていて、上下の頭頂小葉を合わせて頭頂連合野ともいいます。(下図参照)

 

頭頂葉

 

上頭頂小葉は高次の感覚機能を形成していて、体幹や四肢の姿勢を認識する機能を有しています。

 

縁上回は上頭頂小葉から感覚・視覚情報を受け取って物体や人物を認識する機能を有しています。

 

角回の機能は様々報告されていますが、言語・認知に関する多数の処理に関与しているといわれています。

 

◆ 上・下頭頂小葉のMRI横断画像とは??

 

よく教科書に載っている上・下頭頂小葉の部位は矢状断像が多いと思います。

 

しかし、臨床で MRI を診るときの多くは横断像なので臨床応用しづらいことをよく経験します。

 

そのため、横断像における上・下頭頂小葉の位置関係を押さえておくことで脳画像から半側空間無視を早期に評価でき、適切な介入ができると考えています。

 

上頭頂小葉

Fig. MRI T1強調画像における上頭頂小葉の位置関係

 

下頭頂小葉Fig. MRI T1強調画像における下頭頂小葉の位置関係

 

半側空間無視のリハビリ方法とは??

 

半側空間無視患者の治療において、臨床的推奨度の高いものとして、以下の3つが報告されています。

 

 
プリズムアダプテーションとは??

 

プリズムメガネと呼ばれる眼鏡を装着してトレーニングを行います。(下図参照)

 

プリズム眼鏡
引用:メガネのアイワ店長のブログ

 

プリズムメガネは視野を左右どちらかに偏位させることができる眼鏡です。

 

半側空間無視患者では視野を右に偏位させることで、目標物が実際より右にずれてみえます。その状態で目標物を触らすよう指示をして、患者はその目標物を触りにいこうとしますが、右にずれてみえているので、その目標物を触ることができません(目標物の右に手がいってしまう)。

 

その課題を何回かしていくと、患者は学習して、左側へ手を伸ばそうとしてきます。

 

このことを「プリズム適応」といいます。

 

その後、プリズムメガネを外しても目標物の左側へ手を伸ばしてしまうので、左側への意識を集中させることができるといったトレーニングになります。

 

ちなみに、右に 10° 偏位させるのが推奨されているようです。

 

mental imegeryとは??

 

よく耳にする「イメージトレーニング」を臨床応用したトレーニングです。

 

方法として、セラピストがある特定の肢位を提示して、患者はその肢位をイメージします。そして、その後にその肢位のアライメントを口頭で伝えてもらうといったトレーニングです。

 
視覚走査トレーニン

 

パネル上で右から左に点灯していくボタンを追視しながら上肢をその指標に合わせて動かすといった方法で行います。

 

この課題は患者自身で上肢を能動的に動かすことが特徴的なトレーニングになります。

 

◆ 今日のリハゴリ倶楽部

 

  1. 半側空間無視の多くは劣位半球の障害により左側の空間を無視してしまう。
  2. 半側空間無視で簡単かつ有用な検査には線分抹消試験や線分二等分試験がある。
  3. 半側空間無視のリハビリ方法には、プリズムアダプテーション・mental imegery・視覚走査トレーニングがある。