QT延長症候群(LQTS)について
◆ QT延長症候群(LQTS)の概要
心筋細胞の電気的な回復時間が長くなる(延長する)ことで生じる疾患のことで、心電図上のQT時間が延長します。
失神発作が繰り返し起こり、突然死に至ることもあるリスクのある疾患です。
後述しますが、原因には先天性と後天性の2つがあるといわれています。
◆ LQTSの病態
- 先天性LQTS
- 後天性LQTS
◆ 先天性LQTS
これは子どもや若者に多く、遺伝の影響が示唆されています。
心筋イオンチャネル(K+チャネル・Na+チャネル)の機能異常が原因になります。
このイオンチャネルの異常を伴う遺伝性疾患として以下の2つがあります。
- Romano-Ward症候群
- Jervell and Lange-Nielsen症候群
Romano-Ward症候群
K+チャネルやNa+チャネルに遺伝子異常を伴うもので、常染色体優性遺伝の疾患です。
Jervell and Lange-Nielsen症候群
K+チャネルに遺伝子異常を伴うもので、常染色体劣性遺伝の疾患です。
Romano-Ward症候群ではみられない、先天性の難聴が認められます。
これらは発作がないときには無症状ですが、運動をしたり、興奮したり、そしてびっくりするだけでも失神発作が誘発されることがあります。
先天性LQTSは2,500人に1人程度の患者様が存在しているといわれています。
◆ 後天性LQTS
後天性LQTSの原因として以下の3つが代表的です。
- 薬剤性
- 高度な徐脈
- 低カリウム血症
薬剤が原因となる種類
- 抗不整脈薬
(キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、ベプリジル、ソタロール、ニフェカラント、アミオダロン etc…) - 向精神病薬
(クロルプロマジン、ハロペリドール、フェノチアジン etc…) - 抗生剤
(クラリスロマイシン、エリスロマイシン、スバルフロキサン、ペンタミジン etc…) - 抗がん剤
(ドキソルビシン、亜ヒ酸 etc…)
高度な徐脈を誘発する疾患
- 完全房室ブロック
- 洞不全症候群(SSS)
その他、原因となる病態
電解質異常では低カリウム血症が代表的ですが、低マグネシウム血症でも原因となることが報告されています。
また、可能性は低いですが、クモ膜下出血や頭蓋内出血、うっ血性心不全でも原因となることがあります。
◆ LQTSの心電図所見
非発作時のLQTSの心電図ではQT延長症候群という名の通り、心電図上のQT間隔が延長します。
QT間隔とは心筋の収縮開始から弛緩終了までの時間を表していまして、下図のような心電図波形を示します。
◆ torsade de pointes(TdP)
QT延長はtorsade de pointes(トルサード・ド・ポワント)という特殊な心室頻拍を引き起こすことがあります。
重症な不整脈の代表格で、心拍数200〜250回/分で心室頻拍のような心電図となって、あたかもQRSがねじれたような形となり、QT間隔の延長が認められます。
自然に停止する場合が多いですが、中には致命的な心室細動(VF)へ移行して、突然死することもあるため、注意が必要な疾患になります。
おわり。