アテローム血栓性脳梗塞の発症機序を知ることで予後をある程度予測できる!?
◆ アテローム血栓性脳梗塞とは?
主に主幹動脈の動脈硬化(アテローム硬化)が原因となって引き起こされる脳梗塞のことです。
そのため、動脈硬化が進行している中高年に好発します。その他のアテローム性疾患、すなわち狭心症(不安定性狭心症・労作性狭心症)や心筋梗塞なども合併しやすく、併発していることが多いです。
危険因子としては、高血圧、糖尿病、LDLコレステロール高値、喫煙、大量飲酒などが挙げられ、メタボリックシンドロームとの関連が注目されています。
そのため、食生活の欧米化がアテローム血栓性脳梗塞の一要因ともなっており、生活スタイルの改善により発症リスクを低下させることができます。
◆ アテローム硬化の好発部位とは?
アテローム硬化の好発部位として、
- 内頸動脈起始部
- 内頸動脈サイフォン部
- 中大脳動脈水平部
- 椎骨動脈起始部・遠位部
- 脳底動脈中間部
が挙げられます。
大きく3つの機序に分けられます。
- 血栓性機序
- 塞栓性機序
- 血行力学的機序
これらの発症機序は単一で起こる場合もありますが、複合して起こる場合もあります。
◆ 血栓性機序
血栓性機序とは、アテローム硬化により狭くなった血管に血栓が形成されることにより、脳血管が閉塞して発症することです。
アテローム硬化によって、もともと狭くなっているため、血栓が形成される前から側副血行路が作られていることが多いです。
【側副血行路とは??】主要血管が閉塞した場合に、機能を代償するために生じる新たな血液循環経路のこと。
そのため、血栓が形成されて血管が閉塞しても側副血行路からの血液供給により梗塞巣は比較的狭い範囲に留まることが多いです。
◆ 塞栓性機序
塞栓性機序とは、アテローム硬化部の血栓が一部剥がれた塞栓子により、脳血管が閉塞して発症してしまうことです。
心原性脳塞栓症と似ていて、発症が急激かつ短時間で症状が完成します。そのため、側副血行路も未発達なので、硬塞巣は大きくなりやすいです。
◆ 血行力学的機序
血行力学的機序とは、主幹動脈に高度な狭窄があり、代償的に血管拡張や側副血行路が生じたことで、なんとか血流が維持されているところに、全身の血圧低下が起こると、脳血流が低下して脳梗塞を発症してしまうことです。
血行力学性による脳梗塞では境界領域に起こりやすいといわれています。
境界領域とは、各動脈の灌流域の境界にあたり、動脈から遠い位置にある脳の領域のことです。
この境界領域に生じた脳梗塞のことを境界領域脳梗塞または分水嶺(ぶんすいれい)梗塞といいます。
◆ 特徴的な画像所見とは?
アテローム血栓性脳梗塞では、中〜大サイズの比較的大きい梗塞巣が認められます。ときには境界不明瞭で、かつ複数みられることもあります。
しかし、アテローム硬化が少しずつ進んで、側副血行路が発達している場合には比較的、梗塞巣が狭く、境界が不明瞭なことがあります。つまり、同じ脳梗塞でも側副血行路が発達している場合では麻痺が比較的軽度で、ADLは自立レベルにまで回復することが多いということです。
脳画像のポイントとして、以下のような所見が認められます。
- 超急性期にはMRI拡散強調画像(DWI)が有用で、病巣は高信号域(白)となる。
- 急性期から慢性期ではCTで低吸収域(黒)となる。
- MRAでは脳動脈の狭窄像が認められる。
画像所見の種類や特徴、それぞれの見かたについてはこちらの記事を読んでみてください。
◆ 実際の画像所見
上記画像の左は健常人 MRI で支配領域を表していて、右はアテローム血栓性脳梗塞患者の MRI 画像です。
左中大脳動脈(MCA)領域に比較的大きな高信号域が認められます。
MRAでも左中大脳動脈領域に高度の血管狭窄像を示したため、アテローム血栓性脳梗塞であると診断されました。