観念性失行・観念運動性失行とは?評価の方法や画像の見かたとは?
◆ 観念性失行とは??
観念性失行(Ideational apraxia)は使い慣れているはずの道具や物を使うことができなくなる障害です。日常的な用具の使い方や手順を忘れて使えなくなります。
例えば、「ポットの湯をコップに注ぐ動作」の場合、ポットの湯を注ぐには上についてるプッシュボタンを押さないとお湯が出てきませんが、それが分かりません。
またプッシュボタンを押してお湯が出てきますが、どこからお湯が出てくるか分からないので、その下にコップを置き忘れてしまいます。もしくはそもそもお湯にするための水を入れ忘れることもあります。
例えばもう1つ、「タバコを吸う動作」の場合、タバコを口にくわえる前に火をつけようとしてしまったり、タバコに火をつけないまま吸ったりしてしまいます。
ただし、「ポットのプッシュボタンを押す」「ライターで火をつける」「タバコを口にくわえる」など部分的な個々の動作はできます。
このような観念性失行は左角回(下図参照)の障害によって出現します。病巣は左半球(優位半球)ですが、症状は両側に出現するのが特徴的です。
※ 縁上回 + 角回 = 下頭頂小葉
◆ 観念性運動失行とは??
観念運動性失行(Ideomotor apraxia)とは身振りや手まねでの動作ができなくなる障害です。
自発的にできる動作でも真似しようとするとできなくなります。
例えば、歯を磨くことはできますが、「歯を磨いているヒトの真似」ができない、ジャンケンはできますが、「相手と同じポーズを出す」ことができないなどです。
このように自発的には動作ができるので、患者自身も気づかずに生活していることが多いのです。
もう1つの症状としては「社会的習慣動作」ができなくなります。ちなみに社会的習慣動作とは「さようなら」や「敬礼」のことです。
前者は他動詞的動作、後者は自動詞的動作といいます。
つまり、ヒトの模倣をするということは他動的なので他動詞的動作、「さようなら」などの習慣動作は自分きっかけで動作をするということは自動的なので自動詞的動作と理解しましょう。
このような観念運動性失行は左縁上回(上図参照)の障害によって出現します。観念失行と同じく病巣は左半球(優位半球)ですが症状は両側に出現するのが特徴的です。
◆ 観念性失行の評価方法とは??
実際に行う、行為の評価をする前に物の認知が正しいかを確かめましょう。確かめるのは言語的知識と概念的知識です。
言語的知識とは道具の名前、使用方法に関する知識のことです。
概念的知識とは「〜するものはどれか」「〜と一緒に使うものはどれか」など道具の役割や意味合いに関する知識のことです。
しかし、観念失行例は全失語やウェルニッケ失語も伴ってることが多いので、言語的知識について確認できないことがあります。
この場合、下図のように同種類の道具と物を組み合わせる課題を与えて確認していきます。
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こうした予備的検査を行ったうえで実際に道具を使用させて見ます。「クシで髪の毛をとかしたり」「ライターで火をつけたり」「はさみで紙を切ったり」。
◆ 観念運動性失行の評価方法とは??
Karekenら1)による観念運動性失行の検査を紹介します。
自動詞的身振り | バイバイ 敬礼 おいでおいで 止まれ シー(静かに) OKサイン Vサイン |
他動詞的身振り | キーでドアを開ける真似 コインをはじく真似 ケチャップを開ける真似 ドライバーを使う真似 ハサミを使う真似 ノコギリを使う真似 |
これらの自・他動詞的身振りについて実際行ってもらい、動作が可能なのか不可能なのかを評価します。
◆ 今日のリハゴリ倶楽部
- 観念性失行とは普段使い慣れているはずの道具や物の手順を忘れてしまう高次脳機能障害のこと。
- 観念性失行とは模倣動作(他動詞的動作)や社会的習慣動作(自動詞的動作)が困難になる高次脳機能障害のこと。
- 観念性失行は優位半球の左角回、観念運動性失行は優位半球の左縁上回の障害で出現する。