リハゴリ

理学療法士による暇つぶしブログです。

身体失認とは?症状や評価の方法とは?

 

◆ 身体失認とは??

 

身体失認は以下の5つに分けられます。

 

  • 身体部位失認
  • 半側身体失認
  • 病態失認
  • 左右失認
  • 手指失認

 

身体失認は両側性と一側性に分かれていて、両側性に含まれるのは身体部位失認・左右失認・手指失認で主に優位半球(通常は左半球)障害で生じます。

 

一方、一側性に含まれるのは半側身体失認・病態失認で主に劣位半球(通常は右半球)障害で生じます。

 

主な症状としては「自分の身体を認知できない」ことです。ここでは左右失認と手指失認の詳細は省きますが、詳しく知りたい方はゲルストマン症候群の記事でご覧ください。

 

rehagori.hatenablog.com

 

 ◆ 半側身体失認とは??

 

障害側と対側の身体半側を無視して、使おうとしない行動異常のことをいいます。

 

例えば、左半分のみヒゲを剃り残したり、右手だけでパソコンを使用したりします。

 

半側空間無視との違いとして、半側空間無視は「空間」における障害、半側身体失認は「身体」における障害です。

 

つまり、左半分の視界を無視してしまうのが半側空間無視で、左半身を無視してしまうのが半側身体失認です。

 

半側空間無視に関しては以下の記事をご覧ください。

 

rehagori.hatenablog.com

 

多くは半側空間無視と同じで劣位半球障害、特に右頭頂葉後方(上・下頭頂小葉)の障害で出現します。ちなみに下頭頂小葉=縁上回+角回で構成されています。

頭頂葉MRI で詳しく見たい方は以下の記事をご覧ください。

URL:

URL:

 

◆ 身体部位失認とは??

身体部位失認が出現している患者は身体の一部を言われたり、触られたりしてもその部分を示せなかったり、どこを触られているか分からなくなってしまいます。

 

しかし、触られていることはしっかりと分かるということが特徴的です。

 

この身体部位失認の症状は両側に出現します。多くは左もしくは両側の頭頂葉後方(上・下頭頂小葉)の障害によって出現します。

 

頭頂葉

 

上頭頂小葉

 

下頭頂小葉

 

◆ 病態失認とは??

 

広義の意味では「自分の病態に気づかない」といった症状のことを指します。

 

広義の病態失認では

 

 
が代表的な例になります。
 

狭義の意味では「片麻痺に対する病態失認(Babinski 型)」を指すのが一般的になっています。

 

◆  Anton型の病態失認とは??

 

Anton 型の病態失認とは Anton 症候群のことで、見えていないのにも関わらず「見えている」と主張してしまう病気のことです。

 

これは末梢器官の機能が保たれているにも関わらず、両側の一次視覚野の広範な障害によって完全な盲(皮質盲)の状態になってしまいます。

 

また両側側頭葉の障害によって皮質聾(耳が聞こえない状態)の否認も報告がありますが、あまり多くはないようです。

 

ウェルニッケ失語に対する病態失認

 

これは簡単にいえば、ウェルニッケ失語には病態失認も含まれているのではないかといったことです。

 

ウェルニッケ失語の典型例では理解ができていないので、ジャルゴンや錯語などの豊富な発話をしながらも平然と淡々と会話をしますよね。

 

質問の内容に対して全く無関係なことを話したりと意味不明なことが多いです。

 

しかし、患者本人は意味不明なことを話していても全く気づいていないことが多いので、これは病態失認に含まれるのではないかということで、「ウェルニッケ失語に対する病態失認」という概念が生まれたのです。

 

 

rehagori.hatenablog.com

 

片麻痺に対する病態失認(Babinski型)とは??

 

狭義の病態失認として、「片麻痺の否認」が挙げられ、多くの人に知られている病態失認です。

 

片麻痺に対する病態失認の多くは右頭頂葉の広範な障害によって出現するため、片麻痺とはいえども左片麻痺の否認が圧倒的に多いです。

 

症状の現れ方として、左片麻痺を否認する場合もあれば、麻痺に気づいていない場合もあったり、麻痺に気づいていても無関心であり深刻性が伝わってこない疾病性無関心(anosodiaphorie)など多様なパターンがあります。

 

これらの多くは急性期〜亜急性期に出現して、それ以降は自然に消失していきますが、ときどき慢性期まで残存している症例もあります。

 

◆ 身体失認の評価とは??

 

身体失認の評価方法として、半側空間無視と比較するとまだまだ不十分な点も多くて評価は患者に対する問診が中心になると報告されています。

 

問診でも困難な場合には実際の ADL 場面における動作課題をさせて、その動作を観察することで失認の有無を評価すると良いでしょう。

 

◆ 今日のリハゴリ倶楽部

 

  1. 身体失認は身体部位失認・半側身体失認・病態失認・左右失認・手指失認の5つに分けられる。
  2. 半側空間無視は「空間」の障害を表していて、身体部位失認は「身体」の障害を表している。
  3. 片麻痺に対する病態失認はになると同時に自然に消失していく。