変形性膝関節症とは?関節水腫に対する運動療法をご紹介
◆ 変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症(knee osteoarthrosis:knee OA)とは、膝関節軟骨の退行性変化により骨増殖性変化や滑膜炎症を生じることで、関節の変形や破壊をきたしてしまう疾患のことです。
obesity(肥満)による影響が大きいとされていて、変形性膝関節症発症の多くは1次性(原発性)になります。
◆ 変形性膝関節症の症状とは?
変形性膝関節症の症状は主に下記の4つになります。
- 変形(内側型の場合、内反変形)
- 疼痛
- 関節腫脹
- 関節可動域制限
◆ 内反変形(内側型)
進行に伴って、膝関節内側の軟骨摩耗により膝が本来運動しない内反方向へ変形(O脚)していきます。
これはFTA(femoral tibial angle:大腿脛骨角)を測定すれば、変形度合いを評価できます。
◆ 疼痛
変形性膝関節症の初期では動作開始時の疼痛(starting pain)が特徴的です。
例えば、椅子に座って1時間くらいテレビを見て、いざ立ち上がろうとしたときに膝に痛みが出現するような症状です。
これは、滑液が関係しているといわれています。
どういうことかといいますと、変形性膝関節症患者では滑液循環が悪化しており、不動状態が続くと関節内の下方へ貯留していってしまいます。
滑液が下方へ貯留している状態は関節内のクッション作用が低下することになるので、荷重をかけることにより疼痛が出現してしまうのです。
長時間不動が続いた時には軽く膝を屈伸して滑液循環を良くしてから動くと痛みが軽減することが多いです。
◆ 関節腫脹
変形性膝関節症は変性疾患ですが、二次的に滑膜炎を起こすことが多いです。
二次性の滑膜炎により滑液が過剰に分泌され、関節内に貯留することで関節腫脹を来してしまいます。
これは膝蓋跳動(ballottement of patella)の有無を評価することで関節水腫による影響なのかを判断することができます。
膝蓋跳動検査(ballottement of patella test
では、なぜ関節水腫が貯留してしまうかといいますと、進行に伴って関節軟骨が摩耗していきますが、それにより半月板の変性・断裂、関節内遊離体が生じてしまうからです。
この関節内遊離体が関節内から関節包内側(滑膜)を刺激することで反応性の滑膜増殖を引き起こし、滑液を過剰に分泌する方向へシフトしてしまうのです。
関節水腫に関しては関節穿刺により関節液を除去することで関節水腫はなくなります。
この関節穿刺は医師しか実施できませんので、関節水腫の貯留を主治医に報告することが重要になります。
では、関節水腫に対してセラピストができる治療はあるのかといわれますと、実はあります。
それは「quadriceps setting(大腿四頭筋セッティング)」です。
十分な筋収縮を伴ったquadriceps settingを行うと、大腿四頭筋腱が膝蓋上包を強く圧迫し、関節水腫の改善に効果的であるといわれています。
◆ 関節可動域制限
すると、立脚後期の股関節伸展が生じにくくなり、腸腰筋による弾性エネルギーが供給できず、遊脚期を随意的に遂行しなければならなくなります。
このように膝関節は中間関節であるため、可動域制限はADLの各場面における動作に大きな悪影響を与えてしまうのです。
よって、膝関節可動域制限を改善するエクササイズも重点的に行う必要があります。
膝関節屈曲可動域に関する知識についてはこちらの記事も読んでみてください。
◆ 今日のリハゴリ俱楽部
- 変形性膝関節症の疼痛はstarting painが多く、その対処法としては動作開始時に軽負荷の自動運動を数回行うこと。
- 膝関節水腫の除去でセラピストができるエクササイズとして、強い収縮を伴ったquadriceps settingである。
- 変形性膝関節症患者の膝関節可動域制限は可能な限り来さないようにして、可動域制限があっても改善させるエクササイズを実施していく必要がある。