動脈血液ガス分析の単位が分圧で表示されている理由とは?
◆ 動脈血液ガス分析とは?
動脈血液ガス分析とは呼吸機能検査の1つになります。
動脈血には酸素、二酸化炭素、窒素などのガスが溶け込んでいますので、それらを採取してガス分析装置で分析することで、肺や心臓、腎臓などの臓器や体液の性状などを知ることができます。
その結果に出てくる酸素や二酸化炭素の単位が分圧(TorrやmmHg)で表示されていますが、なぜ分圧表示にしなくてはならないのか、そもそも分圧とは何なのかについて記載していきたいと思います。
ちなみに正常の酸素分圧、二酸化炭素分圧は以下の通りです。
- 酸素分圧(PaO2):90±10 Torr
- 二酸化炭素分圧(PaCO2):40±5 Torr
◆ 分圧(mmHg・Torr)とは?
分圧のことを記載する前に、まず圧力のことについて記載させていただきます。圧力とは簡単にいえば「物を押す力」のことです。
例えば、風船を膨らましたときに風船はパンパンになっていると思いますが、これは呼気に含まれる二酸化炭素分子が風船の内側から押しているためです。
この力が二酸化炭素の圧力です。
では、分圧とはなにかといいますと、「2種類以上の混合気体のときのそれぞれの圧力のこと」です。これだけをみてもわかりづらいと思いますので、例を出しながら説明していきます。
風船に二酸化炭素と窒素を入れて膨らましていきます。このとき風船を内側から押している圧力は二酸化炭素と窒素の圧力になります。このそれぞれの圧力のことを分圧といいます。
つまり、「二酸化炭素分圧+窒素分圧=総圧力」ということになります。
この分圧は量によっても高くなったり低くなったりしますので、酸素分圧が低くなるということは酸素量が少ないともいえることができます。
◆ 濃度ではなくて、なぜ分圧で表すのか?
なぜ「酸素濃度」ではなくて、「酸素分圧」で表すのかといいますと、酸素や二酸化炭素は血液中に溶けたり、空気中に排出されたりするためです。
濃度は「液体中の物質の量」と定義されているので、「濃度」という言葉を使う時には液体中の物質にしか適用できません。
それと比べて、「分圧」は液体中でも空気中でもその物質の量を表すことができるので、液体中や空気中に存在する酸素や二酸化炭素の量を表す時にはとても使い勝手が良いのです。
よって、酸素や二酸化炭素の量を表す時には「分圧:単位(mmHg もしくは Torr)」を使います。
◆ 本日のリハゴリ俱楽部
- PaO2の正常値は90±10Torr、PaCO2の正常値は40±5Torrである。
- 分圧とは2種類以上の物質になったときにそれぞれの物質が持つ圧力のこと。
- 濃度は液体中でしか使えないが、分圧だと液体中や空気中でもその物質の量を表すことができる。