リハゴリ

理学療法士による暇つぶしブログです。

貧血とSpO2のカラクリについて

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臨床現場において呼吸器疾患の患者様を診るときに必須のアイテムがパルスオキシメーターです。このパルスオキシメーターで測ることができるのが経皮的動脈血酸素飽和度(以下、SpO2)です。

 

これを指標にリハビリを進めていくのですが、SpO2はそれほど下がってないのに、もしくは全く下がってないのに、しんどさを訴える患者様がしばしばみられます。

 

それはなぜでしょうか、その原因について記載していきたいと思います。

 

◆ SpO2とは?

 

先ほども書いたようにSpO2とは経皮的動脈血酸素飽和度のことでパルスオキシメーター(サチュレーション)を使って計測することができます。

パルスオキシメーター

そのSpO2の意味ですが、何となく「酸素がどれくらい肺の中に取り込まれているかどうか」みたいなニュアンスで捉えていませんか?SpO2とは経皮的動脈血酸素飽和度なので、動脈酸素分圧(PaO2)を直接診ているわけではないのです。

 

というのも、PaO2というのが「酸素がどれくらい肺の中に取り込まれているかどうか」を表しているものになるのです。

 

では、SpO2とは何かといいますと、赤血球中のヘモグロビンのうち酸素と結合しているヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)の割合のことをいいます。これを経皮的に、すなわち皮膚の上から測定できるのがSpO2になります。

 

ちなみに似たようなものでSaO2がありますが、これは動脈血を直接測定する方法を用いるので、より正確に検査することができます。そのため、SpO2の意味は「酸素がどれくらい肺の中に取り込まれているかどうか」ではなく、「酸素がどれくらいヘモグロビンとくっついているかどうか」なのです。

 

◆ SpO2が下がっていないのにしんどい理由

 

タイトルにもあるようにSpO2にはカラクリがあります。でも、SpO2の原理をしっかりと理解しておけば、カラクリにはひっかかりません!

 

もう分かると思いますが、SpO2はヘモグロビンとくっついた割合を数値化しているので、ヘモグロビンと十分にくっつきさえしていれば、100%の数値が出ます。

 

でも、貧血などの疾患でヘモグロビンの量が正常の半分くらいになってしまうと、組織へ運ぶ酸素量も半分になりますので、酸欠状態になります。

 

例えて説明すると、ヘモグロビンがトラックで、酸素を荷物とします。

 

この場合、いつもより半分の台数しかないトラック(ヘモグロビン)に荷物(酸素)を乗せようとも運ばれる荷物は半分しかありませんので、運搬先(組織)でクレーム(酸欠状態)になります。

 

しかし、SpO2でみてみると、ヘモグロビンに酸素がくっついていれば、酸欠になっていようとも100%近くの数値が出ることがあるのです。これが、SpO2は下がらないのに呼吸困難感を訴えるメカニズムです。SpO2はとりあえず、ヘモグロビンと酸素がくっついていれば、100点をあげるんですね(*_*)

 

SpO2のカラクリとメカニズムが分かったので、情報収集するときにどんなところを見ておけば良いのでしょうか??

 

◆ ぜひ見ておきたい血液データ

 

上記にも書きましたが、代表的な症状として「貧血」があります。貧血とは赤血球の数値の減少や形・成分が低下していることをいい、全身の組織や細胞へ酸素を運搬する能力が低下している状態のことです。

 

以下が必要な血液一般検査になります。

 

  • 赤血球
  • ヘモグロビン

 

◆ 赤血球数(RBC

 

赤血球数とは、体内にある赤血球の数を表しています(普通)。何回も言ってしつこいですが、酸素は赤血球(ヘモグロビン)によって運ばれます。

 

赤血球の数が低くなると、全身の組織や細胞へ酸素を運ぶ能力が低くなってしまうので、酸欠状態になってしまいます。つまり、「貧血」になってしまうのです。

 

なので正常値も覚えておきましょう!

 

  • 男性:350万個/mm3
  • 女性:300万個/mm3

 

これよりも低くなってしまうと「貧血」と診断されます。

 

逆に多くても(550万個/mm3)多血症と診断されるので、この間くらいがちょうど良いんですね。

 

◆ ヘモグロビン値

 

ヘモグロビンは赤血球の中に含まれていて、血液を運ぶ主役的存在です。

 

赤血球数が覚えれない・・。という方はヘモグロビン値だけでも覚えましょう!ヘモグロビン値の方がより貧血程度を表しています。

 

そのヘモグロビン値の正常値です。

 

  • 男性:13.2〜17.2g/dl
  • 女性:10.8〜14.9g/dl

 

はい、ヘモグロビン値のほうがややこしいタイプ。でも、安心してください。大まかに10g/dl以下と覚えておきましょう!

 

というのもヘモグロビン値と臨床症状を表している表があって、自覚症状が出現してくるのは10g/dl以下〜だからです。

 

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このヘモグロビン値から「貧血」を予測することができます。しかし、血液データは入院時しか測っていない、もしくは昔の血液データしかない場合、今の「貧血」状態を身体所見から推測する方法があります。

 

それは「眼瞼結膜」です。

 

眼瞼結膜とは、あっかんべーをしたときに見える下まぶたの場所のことをいいます。

 

正常の眼瞼結膜は下の図のように赤みを帯びています。

 

貧血

 

しかし、「貧血」疑いの場合には下の図のように白くなります。

 

貧血

 

眼瞼結膜を観察するときのポイントは前側と後側の色を比較することです。前側も後側も白くなっている場合、眼瞼結膜蒼白となり、貧血を疑う所見となります。

 

ぜひ、参考にして臨床に活かしてみてください!!

 

◆ 今日のリハゴリ倶楽部

 

  1. SpO2は「酸素がどれくらいヘモグロビンとくっついているかどうか」を表している。
  2. つまり、ヘモグロビンが少なくなる貧血状態だとSpO2は正常なのに、呼吸困難感や疲労感を訴えることがある。
  3. 貧血状態をみるには、①赤血球数 ②ヘモグロビン値 ③眼瞼結膜蒼白の有無を確認すると良い。